たとえ9回生まれ変わっても
◯
「ねえ、今からボウリング行かない?」
カフェを出たあと、井上さんが提案した。
え、とわたしは声をあげたけれど、その声は小さすぎて誰にも届かなかった。
「わたし、いまボウリングにハマってるんだよね」
「いいねー」
吉田さんと翔くんも賛成して、駅の近くにあるボウリング場に行くことになった。
白くて大きな建物。
中にカラオケやビリヤードやダーツもあって、幅広く遊べるので学生に人気のスポットだ。
中に入ると、同じくらいの歳の学生たちでいっぱいだった。
わたしは、小学校のときに一度、ここへ来て以来だった。あのときは地域の交流イベントの集まりだった。
思い出したくない記憶が蘇って、気分がずしりと重くなる。
もう何年も前のこと。
他人にとっては、そんなこと、と笑って済ませられるような些細なことかもしれない。
だけどわたしは忘れられなかった。
言葉には重みがある。
言ったほうはすぐに忘れても、言われたほうは、ずっと覚えているのだ。