たとえ9回生まれ変わっても
そのとき、わたしのすぐ横を、何かが素早く横ぎった。
「紫央くん!?」
目の前に、紫央が飛び出した。
転がるボールを追いかけて、紫央が走っていく。
「……へ? 紫央?」
わたしはポカンと口を開けてその背中を見つめた。
え? いやいやいや、何やってるの?
さっきルール説明したよね?
そこ、どう考えても走ったらダメなとこだよね?
「紫央くん、ストップストップ!」
井上さんたちがあわてて呼び止める。
ピンを倒す寸前でボールを捕まえた紫央が振り向いて、えへへと頭を掻いた。
「ぼく、ボール見るとつい追いかけちゃうんだよね」