たとえ9回生まれ変わっても
「心配だったんだよね、紫央くんは」
と井上さんが紫央に笑いかけた。
「森川さんの元気がなかったから。笑ってほしかったんじゃないかな」
「好きな子の元気がなかったら心配するのは、男として当然だよな」
わたしは信じられない気持ちで紫央を見つめた。
紫央はまだしゅんと肩をすぼめたままだ。
「紫央、そうなの……?」
紫央は潤んだ瞳でわたしを見て、こくりとうなずいた。
元気がなかったからって……。
「そんなこと、気にしなくていいのに」
「そんなことじゃないよ」
紫央は今度はきっぱりと言った。
「蒼乃にはいつも元気でいてほしい。蒼乃が元気ないのは、ぼくにとっては全然、そんなことじゃないよ」
わたしは目を見開いて紫央を見た。
紫央はにっこりと笑う。
ーーいつも元気でいてほしい。
どうしてそんなことを、恥ずかしげもなく言えるんだろう。
紫央には恥ずかしいって感情がないんだろうか。
……ないんだろうな、きっと。
そう思ったら、心にふわりと羽のようなものが舞い降りた。