たとえ9回生まれ変わっても
それまでみんな気にはなっていたけれどなんとなく触れずにいたわたしの目のことを、いじってもいい雰囲気ができた。
『なんであおのちゃんの目って青いの?』
『ひとりだけみんなと違うよね。変なの』
『アオメちゃんだって!』
『あ、そっかー』
どうして、人の外見のことを笑えるんだろう。
どうしようもないことなのに。
変えたくても変えられないのに。
まわりの大人たちは、面と向かって笑ったりはしなかったものの、こんな言葉をかけてきた。
『お父さんもお母さんも目が黒いのに、蒼乃ちゃんだけ色が違うね』
本当の子どもじゃないんじゃないか、どこかからもらわれてきたんじゃないか、言葉の裏に、そんな疑問を滲ませて。
わたしはお父さんとお母さんの本当の子どもだ。
そのことを疑ったことは一度もない。
赤ちゃんのときの写真だってあるし、わたしと同じ色の目をしたおばあちゃんの写真だって見たことがある。
覚えていないくらい昔のことだけれど、実際に会ったことだってあるのだ。
わたしは正真正銘、お父さんとお母さんの子どもです。
あなたたちが思っているようなことは、いっさいありません。
そう言いたかったのに、疑いの気持ちなんで微塵もないはずなのに、何も言葉は出てこなかった。
まるで外国から来たばかりで日本語を話せない子どもみたいに、固く口を閉ざしていた。