ずっと探していた人は
昼休み直後の授業。

お腹いっぱいの状態で、程よい気温の中の授業は、睡魔に襲われる。

もういいかな、寝ちゃおうかな…………。

うつらうつらとなって、いっそのこと完全に意識を手放してしまおうと決めた瞬間、先生の「ここ試験に出るぞー」という声が、夢の世界から現実の世界へ私の意識を引き戻す。

私は該当場所を蛍光ペンで印をつけた後にあくびをこらえながら教室中を見渡すと、たくさんのクラスメートが机に頭を突っ伏して寝ている姿が目に入る。

ちょっと…………!!

よく見ると、由夢も徹も大橋くんも寝ている。

私もつい今まで睡魔に負けそうになっていたから人のことなんて言えないとは思いつつも、少し呆れながら3人の様子を順番に見ていると、ふと中川くんと目があった。

両手を上に向けて、左右に首を振る。

中川くんの仕草から、中川くんも呆れていることが伝わってくる。

私は中川くんの気持ちに同意を示すために、何度もコクコクと首を縦に振る。

けれど、何とか起きた私も、授業が退屈で眠たいことは正直否定できなくて。

眠気覚ましとして、こっそり机の中でスマートフォンの画面を開けた。

【滝川さん】

黒い画面に浮かび上がるメッセージ。

【突然連絡してごめん。徹から連絡先、教えてもらいました。昨日も今日も、勉強教えてくれてありがとう】
【俺、すごく英語が苦手で。特に単語が本当に苦手なんだけど、どうしたら単語、覚えられるかな?】

絵文字も顔文字も無いとてもシンプルなメッセージは、大橋くんから初めて送られてきたものだった。

【大橋くん、昼休みはお疲れ様でした。】

丁寧な彼の口調に合わせて、私も返事をする。

【単語は、何度も書いて、何度も見直すしかないと思う。野球部の練習で忙しいと思うけれど頑張って!!】

メッセージを送った後、チラッと大橋くんを見ると、まだぐっすり寝ているようだった。
【ただ、授業は頑張って起きようね!笑】

最後のメッセージがきちんと送信できたことを確認してから、私はスマートフォンを閉じた。
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