ずっと探していた人は
「さっき試着したワンピース、今までで一番いい感じだったんじゃない?」

次のお店へ向かいながら由夢の意見を聞いてみる。

今回試着したワンピースは、黒色のフレアワンピース。

フレアワンピースだけど、首元がV字に開いていて、全体的にピッチリ目だったから、可愛くもありながら、大人っぽさもぎゅっと引き出されていた。

「ほんと? 私も一番しっくりきた! 自分が想像している、大人っぽさに一番近かったっていうか。ウエストのベルトがしっかり締まるから、私の幼児体型もうまくごまかせそう」

「由夢は幼児体型じゃないよっ」

スタイルが悪いと嘆く由夢をなだめる。

けれど、本当にお世辞ではなく、由夢はスタイルが良いのだ。

身長は平均ぐらいだけど、手足はスラリと長くて細くて、どんな私服でも着こなしている。

「あれ?」

次はあのお店ね、と指さした由夢が、ピタリと止まる。

「どうした?」

由夢の視線の先を見る。

するとそこにはー……女の子と2人で歩きながらこちらに向かってくる達也くんがいた。

「あれ、達也だよね……」

呆然と、由夢はつぶやく。

「多分……」

確かに達也くんに似ていた。

けれど達也くんが女の子と2人で歩いているなんてーそれもただ歩いているだけではなく、かなり仲良さげにーあり得るのだろうか……。

「達也だよ、あれ……」

自分に言い聞かせるように、噛み締めるように、由夢はつぶやいた。


達也くんと女の子が2人でお店に入るのを見送ったあと、由夢はふーーーっと長く息を吐きだした。

「由夢……」

何と声をかけていいかわからず、私は立ち尽くす。

「加恋」

そんな私とは反対に、由夢は、はっきりといった。

“達也とは、今日で別れるよ”


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