ずっと探していた人は
「待って」

不思議なぐらい冷静な由夢の腕をつかむ。

「誤解かもしんないじゃん。クリスマスディナーまで予約してくれているんだよ? ただの友達かも……」

「ただの友達としても、彼女以外の女の子と2人で出かけるのはアウトでしょ。ずっと私ともデートしていないのに」

連絡すら返って来るの遅いのにさ、と付け加える。

「けどさ、由夢」

「もういいの」

由夢が、私の言葉を遮る。

「加恋、最後にちょっと付き合って」

由夢は私の腕をつかみ少し強引に引っ張ると、近くのカフェに入った。


「ごめんね、せっかくの休みの日に、買い物付き合ってもらっていたのに」

席に座り注文を済ませるや否や、由夢はぺこりと私に頭を下げた。

「ううん、私は全然……」

それより、由夢がどれだけ傷ついているんだろう、と考えると、胸が痛くなる。

「実はさ、今回が初めてじゃなかったんだ」

「え?」

「だから、達也が、女の子と2人で出かけるの。今回が初めてじゃないの」

由夢からの突然の告白に、私は戸惑う。

「実はね、中学時代から、何度か見ているの」

由夢が口を開く。

「女の子と2人で歩いているのを2回ぐらい見た後だったかな。達也には、『女の子と2人で出かけるのは嫌だ』って言ったんだけど、あんまり響かなかったみたいで……。その後も何度か言ったんだけど、やめてくれなかった」

寂しそうに由夢が笑う。

「中学時代とか、よく会っていた去年とかは、なんとか許せたの。私との時間も、きちんととってくれていたし。それにね、達也からは事前に、『マネージャーから相談があるって呼び出されて……』とか『彼氏に買うプレゼントを一緒に選んでほしいって頼まれて……』とかって、事情も聴いたりしていたから」

運ばれてきたカフェラテを、ゆっくり飲みながら続ける。

「それでもね、やっぱり、今は許せないや。私とはほとんど連絡すら取っていない状態なのに、こんな状態で女の子と2人で出かけるなんて。こんなにないがしろにされてまで、付き合いたくない」

そこまで言い切ると、由夢は、“やっぱり別れるよ”と、私を見てきっぱりと言った。

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