ずっと探していた人は
「由夢……辛かったでしょ……」

本人が泣いていないのだから、私が泣いたらダメだ。

そうわかっていたのに、私の意に反して、ポタッと涙が零れ落ちる。

確かに由夢が、「達也くんが女の子と頻繁に連絡を取っていて」とか、「学校でよく女の子と2人きりで話していて」とか、愚痴ることはあった。

けれど、達也くんが、女の子と2人で遊びに行っているなんて。

そんな度が過ぎたことをしているとは、夢にも思わなかった。


「加恋が泣くことないでしょ」

由夢が笑いながら、ハンカチを渡してくれる。

「どうして相談してくれなかったの。辛い思いしていたなら、相談してほしかった。吐き出してほしかった」

貸してくれたハンカチで涙を拭う。

由夢が一人でずっと抱え込んでいたなんて、知らなかった。
いつもそばにいたのに、由夢の悩みに、気づけなかった。

そんな自分が嫌で、悔しくて、嫌いで。

私の目からは、ポタポタと涙が零れ落ちた。

「加恋、ごめん……」

「ううん、私の方こそ、何も知らなくて、ごめん……。まさか女の子と2人で遊びにまで行っているなんて……」

「違うの」

由夢がゆっくりと首を振る。

「本当はね、怖かったの。達也が女の子と2人で会っているんだって、口に出すと、自分が大切にされていないことを認めちゃうみたいで……」

由夢が黙り込む。

私が顔を上げると同時に、由夢の目から、一筋の涙が滴り落ちた。

「本当はずっと前から、別れた方が良いって、気づいていたの。気づいていたけどー……」

“本当に、大好きだったの”

由夢の真っ直ぐな言葉が、私の胸に突き刺さる。

< 102 / 155 >

この作品をシェア

pagetop