ずっと探していた人は
無事に達也くんとの電話を終えた由夢は、とても清々しい表情だった。

「由夢、かっこいいよ」

2人の電話のやりとりを聞いている限り、きっと達也くんは引き留めたんだと思う。

それでもー大好きだった人から何度引き留められてもー、折れることなく、「別れる」という決心を貫き通した由夢を、私はとてもかっこよく思った。

「ありがと。もうしばらく恋愛はいいや」

由夢は苦笑すると、よし、と気合を入れる。

「今日は、自分のために買い物するぞ~~!」

まずはコスメからだ、と由夢が私の手を引く。

「私、リップ、買いたい。最近ピンクのリップにハマってるんだよね」

私の腕を引っ張る由夢に言う。

「お、いいじゃん。私はリップも見たいし、アイシャドウも新色欲しい!」

買いすぎかな、と笑う由夢に、私は首を振る。

「早く行こ!!」

次は私が由夢の手を引っ張る。

「どうして加恋の方が張り切ってんのよ」

「別にいいじゃん。私だって今日は買い物したい気分だったの!!」

笑う由夢を急かしながら、私は走り出す。

もしかしたら由夢は今、笑いたい気分じゃないかもしれない。

それでもいい。

由夢が笑っているのなら、私も隣で笑おう。

由夢が辛さを思い出して泣いてしまうときは、私も隣で泣こう。

大切な親友のために出来ることは少ないかもしれない。

それでも、親友が心からの笑顔を見せてくれるまで、ずっと、隣にいようと、私は心の中で誓った。

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