ずっと探していた人は
月曜日、由夢に少しでも早く会いたくて、私は少し早く登校して靴箱の前で待つ。
「サード! 行くぞー!!」
声につられてフェンス越しにグラウンドをのぞくと、野球部が朝練をしている。
「今日も元気だなあ」
こんなに寒い中、グラウンドを駆け回る野球部のみんなに、一種の尊敬の念のようなものを抱きながら、寒さにブルッと震える。
「加恋~~~!」
よく知っている声に名前を呼ばれ、グラウンドを見ると、徹がグラウンドからーしかも外野からーぶんぶんと手を振っている。
そして徹の声につられて、野球部の数人が、私を見ているのに気がつく。
「もうっ、恥ずかしいってば」
私は小声で悪態をつきながら、徹に小さく手を振り返すと、「また教室でな~!」と徹が大声で返した。
「はずかしっ」
私はグラウンドに背を向け、フェンスに寄り掛かる。
なんというか、こう、徹って、いつも元気で明るくて、そういうところが徹の長所だということはわかっているんだけど、もうちょっと場所をわきまえるというか、空気を読んでほしいなあ……。
まだ背中に感じる野球部の人からの視線に、私は心の中でため息をつく。
「滝川さん」
フェンス越しに、ちょんちょんと背中をつつかれる。
「大橋くん」
振り向くと、大橋くんが、おはよう、と、にへっと笑った。
「誰か待ってるの?」
「うん、由夢、待ってる」
「そっか」
朝はもうすっかり真冬と同じぐらい厳しい寒さだというのに大橋くんは汗をかいていて、野球部の練習の大変さを物語っていた。
「あ、そうだ。今ちょっとだけ良い?」
グラウンドの入り口に来られる?と指をさす。
「うん、大丈夫だよ。どうしたの?」
今渡したら迷惑になるかな、と思いつつも、私は入り口に向かいながら、カバンから袋を取り出す。
「これ、よかったら」
少し可愛いらしいデザインの袋を大橋くんに渡す。
「俺に? くれるの?」
ぽかんとしながら大橋くんが聞き返す。
「うん」
「中身見てもいい?」
私が返事する間もなく、大橋くんは袋の中をのぞく。
「サード! 行くぞー!!」
声につられてフェンス越しにグラウンドをのぞくと、野球部が朝練をしている。
「今日も元気だなあ」
こんなに寒い中、グラウンドを駆け回る野球部のみんなに、一種の尊敬の念のようなものを抱きながら、寒さにブルッと震える。
「加恋~~~!」
よく知っている声に名前を呼ばれ、グラウンドを見ると、徹がグラウンドからーしかも外野からーぶんぶんと手を振っている。
そして徹の声につられて、野球部の数人が、私を見ているのに気がつく。
「もうっ、恥ずかしいってば」
私は小声で悪態をつきながら、徹に小さく手を振り返すと、「また教室でな~!」と徹が大声で返した。
「はずかしっ」
私はグラウンドに背を向け、フェンスに寄り掛かる。
なんというか、こう、徹って、いつも元気で明るくて、そういうところが徹の長所だということはわかっているんだけど、もうちょっと場所をわきまえるというか、空気を読んでほしいなあ……。
まだ背中に感じる野球部の人からの視線に、私は心の中でため息をつく。
「滝川さん」
フェンス越しに、ちょんちょんと背中をつつかれる。
「大橋くん」
振り向くと、大橋くんが、おはよう、と、にへっと笑った。
「誰か待ってるの?」
「うん、由夢、待ってる」
「そっか」
朝はもうすっかり真冬と同じぐらい厳しい寒さだというのに大橋くんは汗をかいていて、野球部の練習の大変さを物語っていた。
「あ、そうだ。今ちょっとだけ良い?」
グラウンドの入り口に来られる?と指をさす。
「うん、大丈夫だよ。どうしたの?」
今渡したら迷惑になるかな、と思いつつも、私は入り口に向かいながら、カバンから袋を取り出す。
「これ、よかったら」
少し可愛いらしいデザインの袋を大橋くんに渡す。
「俺に? くれるの?」
ぽかんとしながら大橋くんが聞き返す。
「うん」
「中身見てもいい?」
私が返事する間もなく、大橋くんは袋の中をのぞく。