ずっと探していた人は
【クリスマスイブは、お仕事?】

涼くんにメッセージを送った後に、もう1度グループトークを確認する。

けれど会話に参加しているのは、中川くんと徹と由夢の3人でー……大橋くんは、何も発言していなかった。


「滝川さんっ」

翌朝、なんだか浮かない気分で学校に向かっていると、背中をトンッと叩かれる。

「おはよう」

寒そうに首にマフラーをぐるぐる巻いた大橋くんが、隣に立つ。

「おはよう」

「今日は朝練無いんだってね」

昨晩徹から聞いたことを口にする。

「うん、今日はお休み」

「練習、どう? 楽しい?」

徹は基礎練習ばっかりだって嘆いているけれど、と付け加えると、大橋くんは「彼らしいね」と笑った。

「楽しいかは別だけど……。苦ではないかな、キツイけれど。俺は、もっともっと下半身強くしたいから、気合入れて頑張ってるよ」

「そっか、投手は足で踏ん張って球を投げるって言っていたもんね」

いつの日か、話してくれたことを思い出して言うと、大橋くんは大きくうなずいた。

「エースナンバー、取れそう?」

「まだ、わかんない」

弱々しく答えた後、大橋くんは続けた。

「この冬が、勝負だと思ってるんだ。冬にどれだけ頑張るかで、春以降の投球が全然違ってくるから」

だから練習メニューもきっちり作って頑張っている、そう言った大橋くんの言葉に、私は花木さんの顔が浮かんだ。

「花木さんだっけ? よく教室に来ているもんね」

「う、うん」

花木さんの話題を出した瞬間、わかりやすく大橋くんは動揺した。
< 114 / 155 >

この作品をシェア

pagetop