ずっと探していた人は
「なに?」

尋ねると同時に大橋くんを見上げると、大橋くんは「えっと……」と視線を泳がせながら話し出す。

「滝川さんは、クリスマスー……」

「おーい、加恋! 大橋!」

大橋くんの言葉がかき消されるほど、大声で私たちの名前を呼ぶ声が後ろから聞こえる。

「徹」

すぐに追いついた徹に、「いつもいつも声が大きすぎるんだって」とたしなめると、徹は拗ねたように私を見た。

「どうして先に行くんだよう」

「だっておばさんが、徹が寝坊したって言ってたから」

朝練のない日は、だいたい徹と一緒に登校する。

徹が寝坊する日を除いては、だけど。

「寝坊しても少しぐらい待ってくれてもいいじゃん」

「だって私が迎えに行った時、おばさんが『まだ起きてない』って言ってたし。遅刻すのは嫌だもん」

素直に答えると、意地悪だよなあと徹は拗ねたまま大橋くんに愚痴った。

「加恋ってさ、ちょっと薄情だよなあ」

徹に同意を求められた大橋くんは、なんと返事をすればいいのか分からず、困ったように笑った。

さっき、何を言いかけていたんだろう?

徹とじゃれあう大橋くんを見る。

クリスマスって言ってたよね?

何か聞きたかったのかな?

それよりも、私こそ大橋くんが花木さんと過ごすかどうか、聞きたかったな。

「あーもう、徹の奴め……」

私は会話を邪魔した徹に、心の中で思いっきり悪態をついた。

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