ずっと探していた人は
「おじゃましま~す……」

気持ちが整理できないままどんよりした気分で徹の家のドアをあけると、おばさんの「いらっしゃ~い!」という明るい声と一緒に、クリスマスソングが聞こえてくる。

「よ! 加恋!」

徹が唐揚げを片手に、玄関まで迎えに来てくれる。

「加恋、来るの遅いんだもん。先に食べちゃった」

「遅いって、まだ約束よりも10分も早いよ?!」

徹にツッコミながらリビングに入ると、由夢も中川くんも既に来ていて、そして私は彼の姿に驚いた。

「大橋、くん……」

中川くんの隣で美味しそうにローストビーフを食べる大橋くんは、私のほうを見ると、ニコッと笑った。

「今日、来ないかと思ってた」

【ごめん、俺は、不参加で】

数日前にグループトークそう送っていたはずだったのに。

「びっくりしたよね~! 私もまさかいるとは思わなくて、来たときびっくりしちゃった」

ジュースを片手に、由夢がケラケラ笑う。

「ほんっと、大橋の奴、いきなりだよなー!

練習が終わってから、『やっぱり参加したい』って言ってきたんだもん。俺も中川もびっくりしたぜ」

「大橋がいたほうが絶対に楽しいから、嬉しかったけどな!」と、徹がガシッと大
橋くんの肩を組む。

徹の言葉に、大橋くんは、「突然でごめん」と言いながらも、嬉しそうに笑った。



「大橋くん」

料理もデザートも食べ終わり、クリスマスパーティーがなぜか熱唱大会へと変わりつつある頃、ベランダで外の空気を吸っている大橋くんに声をかける。

私が後ろにいることに大橋くんは気づいていなかったようで、大橋くんは肩をビクッと震わした。
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