ずっと探していた人は
「ごめん」

驚かせてしまったことを謝ると、大橋くんはフルフル首を横に振った。

「星、きれいだね」

横にならんで空を見上げると、視界の隅で大橋くんがうなずくのが見えた。

澄み切った夜空には、本当にたくさんの星が輝いていて、こんなに綺麗に星が見えるのはいつぶりだろう、と考える。

きっと今日、日本中のカップルは一緒に空を見上げ、きれいだねって、微笑みあっているんだろうな。

そんなことをぼーっと考えていると、大橋くんが横でクスクス笑った。

「なに、どうしたの」

「滝川さん、ほっぺたに生クリーム、ついてるよ」

「うそ!」

とっさに頬に手を伸ばすと、指にベタっとしたものが触れた。

「うわ、これ、絶対、さっき徹に無理矢理食べさせられそうになった時についたやつだ」

徹が私のケーキをつまみ食いしたから思わず怒った時に、徹がふざけて手に持っていたケーキを私に食べさせようとしたことを思い出す。

文句を言いながら頬をさする私を見て、大橋くんはまた笑った。

「ほんっと仲良いよね」

「まあ幼馴染だからね……」

苦笑気味の私に、大橋くんはまた笑った。

「今日」

一息ついたところで、ずっと聞きたかったことを大橋くんにぶつける。

「どうしてきたの」

私の質問に驚いたのか、大橋くんは笑みを残したまま私に視線を向けた。

「どうしてって」

「だって、不参加って言ってたから」

予定とかあったのかなって思って、そう言うと、大橋くんは、ああ、とうなずいた。

「あったと言えばあったかな。けど来たかったから来たよ」

「なにそれ」

大橋くんの適当な返事に、私はふっと笑みがこぼれた。

「大切な約束だったんでしょ」

わざわざクリスマスイブにする約束なんて、大切な人との大切な約束に決まっている。

夜空の星に視線を戻しながら尋ねると、大橋くんは少しの沈黙の後、口を開いた。
< 120 / 155 >

この作品をシェア

pagetop