ずっと探していた人は
お料理も夜景に負けないぐらい、すごく素敵だった。

「見て、可愛いね」

お料理がのせられているお皿の縁には、テーマパークのキャラクターがソースで描かれている。

「すごい、凝ってるね」

涼くんはソースを少し食べると、美味しいよ、と笑う。

「加恋も食べてみな?」

「勿体なくて……」

そんな私を見て涼くんはハハッと笑った。

「またチケットもらったら連れてきてあげるから」

最後には涼くんになだめられながら食べたお料理は、本当にとても美味しかった。


「加恋、今日はありがとう」

デザートを待っている間、涼くんがそっと切り出す。

「私の方こそありがとう。バレンタインなのに何もしてあげられなくてごめんね」

「ううん? 今日一緒に過ごしてくれたじゃん。それだけで俺、嬉しいよ」

涼くんが、机の上に置かれた私の手に触れる。

「いつも寂しい思いさせちゃって、ごめんね……」

「ううん……」

ふるふると首を振る私に、涼くんは、少し緊張したように、はーっと息を吐きだした。

そしてカバンの中から世界的に有名なアクセサリーブランドの小さな水色の紙袋を取り出す。

「これ……、俺からのバレンタインのプレゼント」

涼くんは紙袋を静かに机の上に置いた。

私はその紙袋を両手で受け取る。

「ありがとう……。プレゼントなんてわざわざ用意してくれなくてよかったのに……」

「ううん、加恋には辛い思いも、寂しい思いも、本当にたくさんさせてきたって思っているから」

償いにはならないけれど、と涼くんはつぶやく。

「この前、達也と会ったときに聞いたんだ。由夢ちゃんと別れたって」

加恋は知ってたんだよね?と聞かれ、私は素直にうなずいた。

「達也、凹んでた。由夢ちゃんのこと、もっと、大切にすればよかったって。由夢ちゃんと離れて、初めて、本当はどれだけ由夢ちゃんのことが好きだったのか、気づいたって。あんなに凹んでいる達也、初めて見たよ……」

「そうだったんだ……」
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