ずっと探していた人は
「大橋くんと一緒にいる時の加恋、楽しそうだったけどなあ」

「それは…………」

何て続けるのがいいのだろう。
何て続けたらいいのだろう。
言葉に詰まる。

「加恋」

由夢がいつになく真剣な表情で私を見て、私の手をギュッと握る。

由夢の思いがけない行動に、ハッと由夢を見つめ返す。

「加恋とは、中学時代からずっと一緒にいるでしょ」

一息ついて、由夢は続ける。

「達也のことで悩んでいた時、加恋はいつも私の味方してくれたよね。達也はちょっと女の子にだらしないところがあったから、その分私は悩むことが多かったけど……。周りの子に相談しても、『そんな彼氏、別れたほうが良いよ』って言われるだけだったけれど、加恋はそうじゃなくて、いつもただ私の話を聞いて、そばにいてくれたよね」

由夢はもう一度、強く私の手を握る。

「いつも同じような愚痴を言う私に、呆れもせず、いつも真剣に聞いてくれる加恋に、私は何度も救われたんだよ。それなのに……」

由夢は眉毛を八の字にして、少し目に涙をためながら続けた。

「加恋が涼くんのことで先輩たちに嫌がらせをされたとき、私は加恋のこと、守ってあげられなかった……」

由夢の目からポロっと涙が落ちる。

「ちょっと、由夢、急にどうしたの」

由夢の思わぬ涙に、私は慌てふためく。

「どうしたのさ?」

私は由夢をギュッと抱きしめると、由夢はすんと鼻をすすった。

「私ね、ずっと後悔してたの。加恋はいつも私を助けてくれたのに、私は何もできなかったなって。もっと加恋のために、出来たことがあったんじゃないかってー……」

「そんなことない、由夢、言い返してくれたじゃん、先輩たちに……」

由夢の言葉を打ち消すかのように被せる私に、由夢はぶんぶんと首を横に振る。

「私にとって」

由夢が顔を上げる。

目が合うと、由夢は恥ずかしそうに笑う。

「加恋は大切な親友だから。ちゃんと幸せになってほしい。加恋のことを大切にして、いつでも加恋を守ってくれる人とー……」

“心から幸せでいてほしい、いつでも”

由夢の真っ直ぐすぎる言葉が、私の胸に刺さる。

「あのね、言おうか迷ってたんだけど……」

由夢はためらいがちに切り出す。

「バレンタインデーさ、大橋くんー……あっっっ!!!」

由夢は急に私の腕を強く引っ張った。

“なに?”

そう聞こうと思った瞬間、頭に強い衝撃を受ける。

「加恋!」

耳元で叫んだ由夢の声を最後に、私は意識が途絶えた。
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