ずっと探していた人は
「かーれんっ」

夕方、涼くんと後から来てくれた両親と4人で話していると、学校を終えた由夢が顔を出してくれた。

「由夢~」

「もうびっくりしちゃった、ふげ!とか変な声上げて倒れるんだもん」

由夢の言葉にみんなが笑う。

「本当にそんな声出したの?」

「出てた、この隣にいた私が聞き逃すはずないじゃん」

大真面目に話す由夢に、みんながまた笑った。

「大丈夫なの? 頭、打ったでしょ」

痛みはない?と心配そうにのぞき込む由夢を元気づけるように、私は力強くうなずく。

「細かい検査はまだしていないけれど、痛くないし、きっと大丈夫」

一応明後日まで入院だと伝えると、また由夢は心配そうな顔をしたけれど、“一応だよ”と念を押すと、由夢は「そっか」と笑った。

「これ、みんなからお土産。みんな明後日試合を控えているからお見舞いに行けないけれどごめんね、って」

由夢が差し出してくれたチョコレートの箱には、メッセージが3つ書かれていた。

「由夢」

「なに?」

「これ」

そこまで言って、今ここでいうべきではないことに気づく。

「ごめん、何もない…………」

「そっか」

きっと由夢も私が言いたいことに気づいていたのだろう。

涼くんと両親の不思議そうな顔が目に入ったけれど、私はそれ以上何も言わず、それを助けるかのように話し出した由夢に応えた。



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