ずっと探していた人は
無事検査も終えて異常が無いことが確認された入院生活最後の朝、ご飯を食べていると由夢が退院祝いに病室へ来てくれた。

「げーんき??」

おどけた様子で扉を開けた由夢に、私は早速文句をつける。

「病院食、味薄すぎる!!!」

「そりゃ病院食だもん、我慢しな」

そう言いながらも由夢は私の大好きなお菓子を渡してくれた。

「もう最高。やっぱり持つべきは親友だね」

「なに調子言いこと言ってんの」

辛辣に言葉を放ちながらも、由夢も嬉しそうに笑ってくれた。

「そういえば由夢、昨日のさ」

「滝川さーん」

急にドアが開き、看護師さんが入ってきた。

「はい」

「何ですか、これ」

看護師さんから小さな花束と、アイスの箱を受け取る。

「さっきね、あなたと同じクラスだっていう男の子がナースステーションに来たのよ。これをあなたに渡してほしいって」

「私と同じクラスの、男の子…………」

「なんだか部活が忙しいみたいで。朝、部活前に急いで持ってきてくれたみたいだよ」

あ、花束にメッセージカードもついているわよ、と看護師さんは付け加えた。

「加恋ちゃんモテモテなのね~あんなにイケメンな彼氏もいるのに同級生からも想われるなんて。しかもホワイトデーにプレゼントだなんて。うらやましいわ」

看護師さんは自分のことのように嬉しそうに話しながら、部屋を去った。

「そっか、今日、ホワイトデーなんだ」

本当は涼くんとデートするはずだったのに、悪いことしちゃったな、と反省する。

「同じクラスの男の子って、誰だろうね」

由夢が横から花束のメッセージを読もうとする。

“はやく元気になってください”

シンプルで、お世辞にも綺麗とは言えない字。

「あれ、アイスの箱、あいてるよ?」

由夢の手元へ視線を移し、中を覗き込む。

そこには、星の形をしたアイスクリームが入っていた。
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