ずっと探していた人は
けれどこの気持ちをもう誤魔化すことはできなさそうだった。

いつから、私はこの気持ちを持ち続けていたのだろう。

「加恋」

ぽたぽたと目から落ちる涙を、由夢が拭う。

「もう素直になりなって。加恋の気持ちは、そういうことなんだよ」

そこまで言うと、由夢は私をぎゅっと抱きしめた。


「加恋、行こう」

「え?」

「さっき、中川くんから連絡がきたよ、今日の練習試合、大橋くんがエースナンバーをもらったって。初めての先発だって」

「うそ…………」

「エース姿の自分を、大橋くんはきっと、誰よりも加恋にみてほしいはずだよ」

由夢が嬉しそうに笑う。

目を閉じると、走馬灯のように、いろんな大橋くんが思い出される。

ポジション争いに負けて、打ちひしがれていた大橋くん。

”俺、頑張るから。マウンドに登るときは、応援に来てね”

花火が降り注ぐ中、エースナンバーを必ず取ると誓った大橋くん。

流れ星にまで、自分の夢が叶うように祈った大橋くん。

エースナンバーを背負った今、大橋くんはどんな表情をしているんだろう。

エースナンバーを背負って初めてマウンドに立つ今、大橋くんはどんなことを思っているんだろう。

「由夢」

「うん?」

私の出す結論なんて、由夢にはすっかりわかっていたようで。

「早く荷物片づけよ、試合、始まっちゃうよ」

由夢に促されて、私は急いで身支度をする。

私の結論に傷つけてしまう人がいることはわかっていた。

けれど、それ以上に、私は大橋くんに、会いたかった。

マウンドに登る大橋くんを、そばで応援したかった。

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