ずっと探していた人は
「滝川さん」

私と大橋くんの視線が重なる。

「俺も、好きです」

色白の頬を真っ赤に染めて発した言葉が、私の耳に届く。

「大橋くん……」

私の思わず溢れ出た涙を、大橋くんがゆっくりと近づいて拭う。

大橋くんは、優しく私を抱きしめた。


「どうして……」

「うん?」

大橋くんが私を抱きしめたまま、問い返す。

「バレンタイン、花木さんと会ったんでしょ……。花木さんと……付き合ったのかと思ってた……」

大橋くんの背中のシャツを、私はギュッとつかむ。

「ああ……」

大橋くんは少し気まずそうに答える。

「会ったけど……断ったよ、付き合えないって」

“ずっと好きな人がいるから、付き合えない。
たとえ報われなくても、その人のそばにいたいんだ、って“

バレンタインにフるなんてひどいよ、と笑いたいのに、大橋くんの言葉に、私の目からはとめどなく涙が溢れる。

「滝川さん」

大橋くんは、私の顔を覗き込むために、抱きしめていた手を少し緩める。

「俺と初めて話した日、覚えてる?」

「初めて話した、日?」

覚えてないよね、と大橋くんが笑う。

「俺と滝川さんが初めて話したのは、高校1年生の夏なんだけど」

高校1年生の夏……?

高校1年生の時は、クラス自体が違ったし、いつ話したのだろう。
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