ずっと探していた人は
それで、徹が防具をつけて座って、大橋くんが投げた球を見て、私―……
「『球、速いね』って、言ってくれた」
大橋くんは当時のことを思い出しているのか、本当に嬉しそうに言った。
大橋くんの投球を見た時の衝撃は、今でもはっきりと覚えている。
ピッチャーが投げる球を目の前で見るのは初めてだったから、「こんなに速いんだ」って、驚いた。
テレビや応援席で見るよりも、もっともっと速くて、素直に「すごいな」と思った。
「滝川さんは、何気なしに言った言葉だったかもしれない。けど、俺、本当に自信なくしていたから。嘘でもお世辞でも、『球速いね』って言ってくれて、本当に嬉しかったし、少しだけ、自信、取り返せたんだよ」
大橋くんが笑う。
「その時だけじゃない。今年だってエース争いに負けて凹んでいた時、滝川さん、励ましてくれた。滝川さんがそばで支えてくれたから、滝川さんがいてくれたから、俺、エースナンバー、取れたよ。だから……」
“これからは、俺が滝川さんのこと、そばで支えさせて。大切にするから”
今までどこか自信なさげだった大橋くんが、力強く、私をぎゅっと抱きしめる。
そしてその瞬間、私は今までに感じたことの無いような、なんだろう、温かくて穏やかな、そんな気持ちに包まれた。
「やっとわかった」
しばらく抱き合った後、私は大橋くんの腕からそっと離れる。
「なにが?」
不思議そうに聞き返す大橋くんに、私は泣いた恥ずかしさを隠すようににっこり笑う。
「なんでもないよう」
「なにそれ」
まだ不思議そうに聞き返す大橋くんに、「行くよっ」と私は歩き出す。
いつからか、ずっと探していた。
いつもそばにいて、安心をくれる人。
いつもささやかな幸せを、くれる人。
それはずっと前から大橋くんだったんだね。
特別な幸せなんていらない、ただただこれからも穏やかな時間を、一緒に過ごしていきたいと素直に思う。
「大橋くん」
「なに?」
また不思議そうに聞き返す大橋くんに、私はとびきりの笑顔で言う。
「アイス、食べよう!」
大橋くんはその言葉に、ふふっと笑ってから、大きくうなずいてくれた。
「『球、速いね』って、言ってくれた」
大橋くんは当時のことを思い出しているのか、本当に嬉しそうに言った。
大橋くんの投球を見た時の衝撃は、今でもはっきりと覚えている。
ピッチャーが投げる球を目の前で見るのは初めてだったから、「こんなに速いんだ」って、驚いた。
テレビや応援席で見るよりも、もっともっと速くて、素直に「すごいな」と思った。
「滝川さんは、何気なしに言った言葉だったかもしれない。けど、俺、本当に自信なくしていたから。嘘でもお世辞でも、『球速いね』って言ってくれて、本当に嬉しかったし、少しだけ、自信、取り返せたんだよ」
大橋くんが笑う。
「その時だけじゃない。今年だってエース争いに負けて凹んでいた時、滝川さん、励ましてくれた。滝川さんがそばで支えてくれたから、滝川さんがいてくれたから、俺、エースナンバー、取れたよ。だから……」
“これからは、俺が滝川さんのこと、そばで支えさせて。大切にするから”
今までどこか自信なさげだった大橋くんが、力強く、私をぎゅっと抱きしめる。
そしてその瞬間、私は今までに感じたことの無いような、なんだろう、温かくて穏やかな、そんな気持ちに包まれた。
「やっとわかった」
しばらく抱き合った後、私は大橋くんの腕からそっと離れる。
「なにが?」
不思議そうに聞き返す大橋くんに、私は泣いた恥ずかしさを隠すようににっこり笑う。
「なんでもないよう」
「なにそれ」
まだ不思議そうに聞き返す大橋くんに、「行くよっ」と私は歩き出す。
いつからか、ずっと探していた。
いつもそばにいて、安心をくれる人。
いつもささやかな幸せを、くれる人。
それはずっと前から大橋くんだったんだね。
特別な幸せなんていらない、ただただこれからも穏やかな時間を、一緒に過ごしていきたいと素直に思う。
「大橋くん」
「なに?」
また不思議そうに聞き返す大橋くんに、私はとびきりの笑顔で言う。
「アイス、食べよう!」
大橋くんはその言葉に、ふふっと笑ってから、大きくうなずいてくれた。