ずっと探していた人は
「かーれーんっ」

放課後、教室で行っている5人の勉強会。

普段は賑やかな野球部3人組と由夢も、さすがにテスト直前ということもあり、5人で机こそ寄せているけれど、誰も喋らずただ目の前の自分の問題に取り組む。

シャーペンが生み出す音しかない静かな空間では、大きく響いた。

「あっ」

みんなが顔を上げると同時に、私は自然と笑顔を作る。

「涼くん」

涼くんの声を聞くと自然と笑みが浮かんだ。

みんなに、ごめんね、と断ってから、席を立つ。


「お待たせ、お疲れ様。今日も学校来ていたんだね?」

さすがにテスト前だから、涼くんもここ数日は少しの時間でも学校に顔を出していた。

「うん! 加恋もお疲れ様!」

「ありがと」

涼くんがいつも通り、明るく笑う。

こんなに素敵な笑顔を独り占めできるなんて、私はなんて幸せなんだろう。

「今、何してたの?」

チラッと教室に視線を投げながら、涼くんが尋ねた。

「テスト勉強だよ。1人で勉強していてもわからない問題が出てきたら困るから、最近みんなで一緒に勉強してるの」

私の答えと同時に、涼くんの笑顔が少し曇った。

「男の子も、一緒にしてるの?」

もう一度涼くんは教室の中を覗き見る。

「あー、うん」

涼くんは、心配性だ。
モデルという仕事に就いているうえ、校内では誰もが1番かっこいいって絶対認めるのに、私の男友達にはとても心配する。

それは分かっていたけれど、嘘をつくこともどうかと思い、私は正直に答えた。

だって別に、やましいことをしているわけじゃないし。ただ勉強しているだけだし。

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