ずっと探していた人は
「あいつ、夏大で、ベンチ入りできなかったんだよ」
「そうなんだ…………」
確か投手だよね、と尋ねると、徹はうなずいた。
「違うクラスの、三井って知ってる?」
「三井?」
聞いたことのない名前に、私は首を振った。
「2年でエース候補は、大橋と三井がいるんだ。」
ふーっと息を吐きだすと、徹は一気に話した。
「同じ学年で同じポジションで、ずっと2人で競い合ってきたから。三井はベンチ入りが発表されたとき大喜びしていたけど、その分大橋は落ち込んじゃってさ。当然なんだけど」
“その日から、全く思い通りピッチングが出来ないらしい”
いつも明るい徹。
その徹が静かにそっと言った様子に、私は胸が締め付けられた。
こんな徹を見るのは、あの時以来だ。
「徹…………」
思わず呼びかけると、徹はふっと我に戻った。
「俺は大丈夫だぜ」
「けど……」
なんと続けるべきなのかわからなくて、私は黙り込む。
野球が上手な徹。
中学校時代も、入学と同時に3年生を差し置いてレギュラー入りした徹。
高校でも、1年生の時からレギュラーとして試合に出ている徹。
誰よりも野球が大好きで、誰よりも練習している彼が、中学校時代にーしかも中学校サイドの大切な試合前にーレギュラーから外されたことがあった。
俗に言う“スランプ”。
明るい性格で、野球が大好きで、だからこそ誰よりも楽しんで野球を続けてきた徹。
その徹が「もう野球続けられないかもしれない」、と、ポツリと弱音を吐いた日を、
その時の辛そうな徹を、今も私は忘れられない。
“俺ら野球部3人は、もう兄弟みたいなもんだな!”
テスト勉強をした帰り道、いつの日か嬉しそうに言っていた徹を思い出す。
高校に入学してから、教室でも部活でもずっと一緒にいる3人。
本当に家族のように仲が良くて大切で、そしてその大橋くんが感じている辛さや苦しみがわかるからこそ、徹も本当に辛そうで……
自分から呼び出したのに、本当になんと声をかければよいのかわからなくて、ただただ私は徹を見つめる。
一瞬下を向いてギュッと目を瞑った後、大きく深呼吸した徹は、いつものように二カッと笑う。
「大橋は、ちゃんと乗り越えられるよ、この挫折に」
力強く、そして自分を説得させるように言う徹に、私もうなずくいた。
「だから、もし何か弱音はいてたら、聞いてやって」
俺たちには絶対吐いてくれないから、と徹が苦笑する。
そんな徹を見て、私は「うん」とうなずくと、「うん」と徹も笑顔でうなずく。
けれど、私は見逃さなかった。
下を向いた瞬間、徹がすごく苦しそうな顔をースランプに陥っていた時と、全く同じ顔をーしていたことを。
そんな徹を見て、ただただ徹と大橋くんに、本当の心からの笑顔が早く戻ることを、私は願った。
「そうなんだ…………」
確か投手だよね、と尋ねると、徹はうなずいた。
「違うクラスの、三井って知ってる?」
「三井?」
聞いたことのない名前に、私は首を振った。
「2年でエース候補は、大橋と三井がいるんだ。」
ふーっと息を吐きだすと、徹は一気に話した。
「同じ学年で同じポジションで、ずっと2人で競い合ってきたから。三井はベンチ入りが発表されたとき大喜びしていたけど、その分大橋は落ち込んじゃってさ。当然なんだけど」
“その日から、全く思い通りピッチングが出来ないらしい”
いつも明るい徹。
その徹が静かにそっと言った様子に、私は胸が締め付けられた。
こんな徹を見るのは、あの時以来だ。
「徹…………」
思わず呼びかけると、徹はふっと我に戻った。
「俺は大丈夫だぜ」
「けど……」
なんと続けるべきなのかわからなくて、私は黙り込む。
野球が上手な徹。
中学校時代も、入学と同時に3年生を差し置いてレギュラー入りした徹。
高校でも、1年生の時からレギュラーとして試合に出ている徹。
誰よりも野球が大好きで、誰よりも練習している彼が、中学校時代にーしかも中学校サイドの大切な試合前にーレギュラーから外されたことがあった。
俗に言う“スランプ”。
明るい性格で、野球が大好きで、だからこそ誰よりも楽しんで野球を続けてきた徹。
その徹が「もう野球続けられないかもしれない」、と、ポツリと弱音を吐いた日を、
その時の辛そうな徹を、今も私は忘れられない。
“俺ら野球部3人は、もう兄弟みたいなもんだな!”
テスト勉強をした帰り道、いつの日か嬉しそうに言っていた徹を思い出す。
高校に入学してから、教室でも部活でもずっと一緒にいる3人。
本当に家族のように仲が良くて大切で、そしてその大橋くんが感じている辛さや苦しみがわかるからこそ、徹も本当に辛そうで……
自分から呼び出したのに、本当になんと声をかければよいのかわからなくて、ただただ私は徹を見つめる。
一瞬下を向いてギュッと目を瞑った後、大きく深呼吸した徹は、いつものように二カッと笑う。
「大橋は、ちゃんと乗り越えられるよ、この挫折に」
力強く、そして自分を説得させるように言う徹に、私もうなずくいた。
「だから、もし何か弱音はいてたら、聞いてやって」
俺たちには絶対吐いてくれないから、と徹が苦笑する。
そんな徹を見て、私は「うん」とうなずくと、「うん」と徹も笑顔でうなずく。
けれど、私は見逃さなかった。
下を向いた瞬間、徹がすごく苦しそうな顔をースランプに陥っていた時と、全く同じ顔をーしていたことを。
そんな徹を見て、ただただ徹と大橋くんに、本当の心からの笑顔が早く戻ることを、私は願った。