ずっと探していた人は
「大橋くんは? 何していたの?」
部活着を着ていないから、きっと本当に練習は休んでいるのだろう。
「お、俺は…………」
必死に言葉を探す大橋くんを横目に、開けたアイスクリームの箱の中を見ると、私は嬉しくて声をあげた。
「やった!!」
「え?」
急に何事かと、大橋くんも箱の中を覗き込む。
箱の中には、バニラアイスの周りにチョコレートがコーティングされた、丸いアイスクリームが6個並んでいるはずだった。
けれど、そのうちの1つが、星の形をしていた。
「このアイス、星の形してる!!」
「わ、ほんとだ!!」
大橋くんは初めて見たようで、珍しいね、と笑った。
「久しぶりに、笑ったね」
大橋くんの笑顔を見るのは、本当に久しぶりだった。
「そうかな?」
そういう本人は、気づいていないんだろうな。
時々見せる、苦しそうな表情に。思い悩んでいる表情に。
「なにがあったのかわからないけど、話なら聞くから」
アイスを1つ口に運ぶと、想像以上に冷たくて、笑ってしまった。
「つめたっ!!」
食べてみて、アイスクリームの箱を大橋くんの方に押しやる。
「うわ、冷たいねっ!」
大橋くんも、予想よりずっと冷たかったようで、「冷たい冷たい」と言いながら足をバタバタさせる。
その様子がなんだか面白くて笑うと、大橋くんも私につられて笑いだした。
アイスを食べて笑うのなんて、いつぶりだろう。
そんなことがふと頭に浮かんだけれど、考えなかった。
今はただ、笑っていたかった。
なぜか笑いが止まらなくてしばらく笑い続けた後、今なら言える気がして、大橋くんになら言って良い気がして、ぽつりと言う。
「本当は、寂しいよ」
「ん?」
まだ口角を上げている大橋くんは、不思議そうに私を見た。
「彼氏、仕事ばっかりだから」
「あ、そうだよね」
さっきの話の続きをしていることが伝わったみたいで、大橋くんの顔から笑顔が消えた。
「けどね、彼氏にとって私の存在が仕事以上になることって、今までもこれからも、きっと無いの」
“だから正直、諦めの気持ちが大きい”
押し殺していたため息が、思わず出る。
「滝川さん…………」
大橋くんが、何か言いたそうにしたのを気付いたけれど、私は続けた。
「けどね、彼氏、中学校の頃からモデルになりたいって言っててね。その夢が叶ったから、今、本当に楽しそうで幸せそうなの。だから、この気持ちを彼氏に伝えても、困らせるだけだって、彼氏の重荷になるだけだって、わかっているんだ」
だから、と私は続ける。
部活着を着ていないから、きっと本当に練習は休んでいるのだろう。
「お、俺は…………」
必死に言葉を探す大橋くんを横目に、開けたアイスクリームの箱の中を見ると、私は嬉しくて声をあげた。
「やった!!」
「え?」
急に何事かと、大橋くんも箱の中を覗き込む。
箱の中には、バニラアイスの周りにチョコレートがコーティングされた、丸いアイスクリームが6個並んでいるはずだった。
けれど、そのうちの1つが、星の形をしていた。
「このアイス、星の形してる!!」
「わ、ほんとだ!!」
大橋くんは初めて見たようで、珍しいね、と笑った。
「久しぶりに、笑ったね」
大橋くんの笑顔を見るのは、本当に久しぶりだった。
「そうかな?」
そういう本人は、気づいていないんだろうな。
時々見せる、苦しそうな表情に。思い悩んでいる表情に。
「なにがあったのかわからないけど、話なら聞くから」
アイスを1つ口に運ぶと、想像以上に冷たくて、笑ってしまった。
「つめたっ!!」
食べてみて、アイスクリームの箱を大橋くんの方に押しやる。
「うわ、冷たいねっ!」
大橋くんも、予想よりずっと冷たかったようで、「冷たい冷たい」と言いながら足をバタバタさせる。
その様子がなんだか面白くて笑うと、大橋くんも私につられて笑いだした。
アイスを食べて笑うのなんて、いつぶりだろう。
そんなことがふと頭に浮かんだけれど、考えなかった。
今はただ、笑っていたかった。
なぜか笑いが止まらなくてしばらく笑い続けた後、今なら言える気がして、大橋くんになら言って良い気がして、ぽつりと言う。
「本当は、寂しいよ」
「ん?」
まだ口角を上げている大橋くんは、不思議そうに私を見た。
「彼氏、仕事ばっかりだから」
「あ、そうだよね」
さっきの話の続きをしていることが伝わったみたいで、大橋くんの顔から笑顔が消えた。
「けどね、彼氏にとって私の存在が仕事以上になることって、今までもこれからも、きっと無いの」
“だから正直、諦めの気持ちが大きい”
押し殺していたため息が、思わず出る。
「滝川さん…………」
大橋くんが、何か言いたそうにしたのを気付いたけれど、私は続けた。
「けどね、彼氏、中学校の頃からモデルになりたいって言っててね。その夢が叶ったから、今、本当に楽しそうで幸せそうなの。だから、この気持ちを彼氏に伝えても、困らせるだけだって、彼氏の重荷になるだけだって、わかっているんだ」
だから、と私は続ける。