ずっと探していた人は
次の日の朝、いつも通り由夢と喋っていると、廊下から野球部3人組の笑い声が近づいてきた。
「あれ、あんな笑い声久しぶりだね」
由夢が「何かいいことでもあったのかな」と嬉しそうに笑う。
「おっはよ~!」
いつもに増して徹は明るい声で、教室中に響き渡る大きな声で挨拶をした。
「今日、いつもの3倍ぐらいテンション高そうだね」
朝から元気だなあと笑った由夢に、徹は嬉しそうに言った。
「大橋のピッチングが絶好調だったんだよ!」
徹に肩を組まれた大橋くんは、隣で嬉しそうに笑っていた。
「おお、よかったね!」
「うん!」
明らかに昨日までとは違う、久々に見る明るい笑顔に由夢もとびきりの笑顔になる。
由夢も大橋くんのことずっと心配していたから、嬉しいだろうな。
「大橋くん、練習お疲れ様」
私が声をかけると、大橋くんはー昨日泣き顔を見せてしまったことを恥ずかしく思ったのかー、一瞬顔を赤くしてから、ありがとうと言った。
「すっごく楽しみにしてるからね!」
大橋くんがエースになること。
続きは言わなかったけれどきちんと伝わったみたいで、大橋くんはまた大きく、うん!とうなずいた。