ずっと探していた人は
「涼くんは、私の誇りだなあ……」

感慨深くつぶやいた私に、涼くんがクスッと笑う。

「ほんと? 加恋がそう言ってくれると、もっと頑張ろうって思える」

涼くんが私のおでこに軽くキスをする。

「撮影が始まると、また学校に来られる日も減っちゃうと思うけど……加恋に会いに来るから。加恋に会うために、ちゃんと頑張って登校するから」

涼くんが私を抱きしめながら言ったセリフが嬉しくて、うんうん、と涼くんの腕の中で首を振った。

「けど、無理、しないでね」

「加恋に会うためなら、ちょっと無理しちゃうかも」

笑いながら腕を緩める涼くんを見上げると、なんだか顔つきが変わったなともう。

私が知っている涼くんよりも、ずっと大人びて、そしてなんだか、自信であふれた顔つきをしていた。

「なんか、すごいなあ。みんな、頑張っているんだね」

「みんな?」

少し首をかしげて尋ねた涼くんに、うなずく。

「同じクラスの野球部の子たちもね、すっごい練習頑張っているんだ。今年はベンチ入りできなかった子も、もう来年の大会を見据えて、練習に励んでるんだって。すごいよね、みんな偉いよね」

「そう、なんだ…………」

少し間が開いた後、涼くんは、「もっともっと加恋に褒めてもらうために頑張らないとなあ」と言いながら、今度はゆるく私を抱きしめた。

「涼くん」

「ん?」

「作品完成したら絶対に観に行くね」

「うん、絶対に来て。絶対にいい作品にするから」

涼くんの肩越しにみた空は真っ青で、涼くんの作品もこの青空に負けないぐらい素敵なものになればいいなと心から願った。


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