ずっと探していた人は
「予定って? 部活?」

「それが、サッカー部の人たちと、海に行くんだって」

最近めっきりデートに誘ってくれなくなったし、そもそも夏休みだってほとんど会う約束していないんだよ?

それどころか、連絡すらもほとんどくれなくなったし、もう潮時かな?

電話口で由夢が愚痴る。

「達也くん、そんなに部活忙しいの?」

運動系の部活に所属しているし、達也くんの高校は、それなりのサッカーの強豪校だ。

きっと練習だって、かなりキツイと思う。

けど、連絡も出来ない程忙しいのだろうか……。

「わかんない」

由夢は正直に答えた。

「今どれぐらい忙しいのか大変なのか、もうそれすらわかんないや……」

由夢は、はーーーっと思いっきりため息をつくと、「まあもういいや」と、投げやりに言う。

「加恋は涼くんと花火大会行くの? 最近撮影でかなり忙しい、って、前言っていたよね」

由夢からの問いに、私も軽くため息をついた。

「私たちも今年は行かないと思うよ」

「約束してないの?」

「んー、約束していないっていうか……そもそも今、花火大会がどうとかこうとか、言っている場合じゃないっぽいんだよね……」

だから、行くかどうかすら聞けていなくて、と私も正直に答える。

「そっか~……。けど、もし一緒に花火大会に行けたところで、大騒ぎになりそうだよね」

その由夢の言葉にハッとする。

そっか、人気が出たってことは、これからはあんまり2人きりとかで歩いたらだめなのかな。

涼くんの事務所は恋愛禁止じゃないって言っていた。

けれど、恋人の存在なんてあんまり公にしないほうが良いよね。

特に涼くんは女性ファンが多いし……。

そう考えると、涼くんとの距離が、本当に遠くなった気がした。

「加恋~??」

電話口から聞こえる呼び声で我に返る。

「由夢、達也くんと花火大会行かないのなら、みんなで行こうよ。去年みたいに、たこ焼き食べたり、金魚すくいしたりしようよ」

私の提案に、由夢は嬉しそうにうなずく。

「電話切ったら、グループトークで返事しておくね。あ、加恋はもうしていたんだね」

「うん、ちょうどさっきね」

「加恋、どうせなら思いっきり楽しもうね」

「当たり前じゃん」

「電話を切ったら返事しておくね」という由夢の言葉を最後に通話は終わり、仰向けになりながら目を閉じて、思い出す。
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