ずっと探していた人は
去年の花火大会では、みんなでたこ焼きを食べた。

その後に、みんなでかき氷を賭けながら、本気で金魚すくいして……

負けた涼くんの驕りで食べたイチゴ味のかき氷は、とても美味しかった。

そしてその後にみた花火は、言葉にできないほどきれいで、まるで私たち4人の頭上だけに降り注いでいるんじゃないかと思うほど迫力があった。

懐かしく楽しかった思い出に、頬が緩んでしまう。

けれど、今年は一緒に過ごせない。

今まで考えてこなかったけれど、きっと無意識のうちに考えることを拒んできたんだろうけど、一緒に過ごせない現実を、思い出を振返ることしかできない現実を、目の当たりにして、涼くんと私の進む道にはっきり溝ができてきていることを実感せざるを得なかった。

「だめだ、だめだ」

私は読みかけていた漫画を開けながら、首を強く横に振る。

今は涼くんの仕事を応援する時期だから、距離が生まれるのは仕方がない。

きっと今の仕事が落ち着いたら、前みたいに堂々とデートは出来ないかもしれないけれど、少しの時間会ったり、頻繁に連絡してくれたりするようになるはず。

その時まで、じっと私は待つのみ。

それが彼女として、涼くんにしてあげることだと私は自分に言い聞かせた。


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