ずっと探していた人は
それから私たち5人は、思いっきり屋台を楽しんだ。

最初にしたのは、金魚すくい。

「こんなの、いくらでもすくえるよ」

1匹もすくえず拗ねていた4人に、中川くんは軽々しく一気に2匹すくった。

「金魚すくいは、中川くんの特技だね……」

しみじみつぶやいた大橋くんに、「なんかもうちょっとかっこいい特技が欲しいけどな」と中川くんは苦笑する。

「どうしてそんなにすくえるの? 練習でもしたの?」

中川くんの隣で由夢がじっと観察しながら尋ねる。

「逆にどうしてすくえないの?」

「いや、普通はすくえないでしょ」

由夢の言葉に、私たち4人は一斉にうなずいた。

「欲しいなら持って帰ってもいいよ」

たくさんすくった金魚を目の前にぶらんと揺らしながら、中川くんが由夢に渡す。

「え、いいの? ありがとう!!」

由夢は嬉しそうに、けどどこか切なげな表情で金魚を見つめる。

そういえば去年、達也くんも金魚をとって、由夢にあげていたっけ。

「由夢、次はヨーヨーすくいしよう」

由夢に今を楽しんでほしくて、次は私は由夢の腕を引っ張る。

「加恋はヨーヨーすくい得意だったよね」

「まあね」

にやりと笑うと、“勝負だな!”と頭の上から声が降ってくる。

「中川くんと勝負……」

「なんだ、得意じゃないのかよ?」

さっきの中川くんの金魚すくいの腕を見ていると、なんだか勝てる気がしなくて、私は「うう……」とつまる。

「そもそもお祭りなんてほとんど来たことないって言っていたのに、どうしてそう色々得意なのよ?」

私の問いかけに、「才能?」と中川くんは笑いながら答えた。


「そろそろ花火見るために移動した方がいいんじゃないか?」

屋台をたっぷり堪能して食べ物もたくさん確保したタイミングで、中川くんが提案する。

「んじゃー、あそこ行くか!」

「あそこってどこよ?」

先頭を歩く徹に尋ねても、ふふーんとご機嫌よく笑うだけで、教えてくれなかった。

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