ずっと探していた人は
午後からは軽くショッピングをして、その後に私のリクエストで、今人気のアクション映画を見た。

私より一足先にこの映画を見た由夢からも、すごく迫力があって面白かったと聞いていたから、絶対に見てみたかったのだ。

「何、この席」

半券に書かれた座席までたどり着くと、普通の座席よりも少し大きい、2人用の席があった。

「加恋、知らないの?」

“カップルシートだよ”

そんなものがあるなんて知らなかったから、思わず私は声を上げた。

「なにそれ! 初めて!」

「そう? 加恋の初めてを俺が経験出来てよかった」

おいで、と先に座った涼くんが椅子をポンポン叩く。

座った瞬間、涼くんにギュッと肩を寄せられる。

「ちょっと、みんな、みてるよっ」

「んー? 別にいいじゃん」

「よくないよっ!」

少し強い力で涼くんを自分とは反対側に押す。

「涼くんだってバレたら大変でしょ?」

小声でたしなめる。

もし周りにファンの子たちがいて、写真でも撮られたら大変だ。

今の時代、写真なんてSNSですぐに拡散されるし。

いくら恋愛は自由だと事務所が言っていても、せっかくの人気上昇中の時期に熱愛報道は良くないと思う。

それに、私といることで、涼くんを面倒に巻き込んだり、涼くんがお世話になっている事務所に迷惑をかけたりしたくない。

「大丈夫だって。加恋は気にし過ぎなんだよ」

涼くんは、私にもたれかかるよう、ぽんぽんと自分の肩を叩く。

結局涼くんは、私の心配をよそに、映画中もずっと離してくれなかった。

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