ずっと探していた人は
「わわっ!!」

思わず驚いて、誰からの着信かも確認せず電話を取った。

「もしもし?」

電話口から響くのは、大好きだった甘い声で。

その声を聞いた瞬間、なぜか一粒だけ涙がこぼれた。

「加恋?」

聞こえる?と尋ねる声に、大きく深呼吸をしてから返事をする。

「聞こえるよ」

出た声は想像以上にしっかりしていて、ホッと安心をする。

涙声や弱々しい声を、今は涼くんに聞かれたくなかった。

「メッセージ、読んだ?」

いつもより少しトーンの低い声が耳に響く。

「読んだよ、今読んだ」

「そっか」

2人の間に少し沈黙が流れる。

「由夢ちゃんから、今までのこと全部聞いた。何も知らなくて、ごめん」

朝とは全く違う、申し訳なさそうな声に、電話口先での涼くんの表情が目に浮かぶ。

「うん」

2人の間に、また沈黙が流れる。

「俺の熱愛報道が、加恋をあんなに傷つけるとは想像してなかった。本当にごめん」

電話口の涼くんは、苦しそうで、悲しそうで、本当に反省していることが伝わってくる。

本当は守ってほしかった。助けてほしかった。

けれど仕事で学校に来ていなかったのだから、私が嫌がらせを受けていたことを知る術もないし、仕方がないと言えば仕方がないのかな。

少し冷静に考えることができるようになった私が「もういいよ」と言おうとしたとき、涼くんが「ごめん」ともう一度謝った。

「けど、否定のコメントはやっぱり出せないし、学校でもコメントするわけにはいかないんだ」
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