ずっと探していた人は
翌朝、また先輩たちから何か嫌がらせをされるだろうと構えながら重い足取りで学校へ赴く。

校舎が見えると同時にため息をしそうになった時、校門の横に立っている由夢が視界に入った。

「由夢、おはよ」

わざわざ待っていてくれたのだろう。

「待っていてくれてありがとう」というと、由夢は大げさなぐらい首をぶんぶん横に振った。

「加恋」

由夢はぎゅっと私を抱きしめた。

「昨日、大丈夫だった……?」

何も助けてあげられなくてごめんね、と謝る由夢に、次は私が首を振る。

「そんなことない、私こそ心配かけてごめんね」

「昨日、涼くんとは話せた……?」

靴箱に向かいながら、由夢は遠慮がちに切り出す。

「あー……。うん……」

私の返事で、昨日の涼くんとの話し合いの内容を察したのか、「やっぱり否定コメントは出せないか」と由夢が独り言のように呟く。

「由夢」私は足を止めて、由夢を真っ直ぐ見つめる。

こんなこと言いたくない。
けれど、それ以上に、もう周りの人たちに迷惑をかけたくない。

昨晩何時間も悩んで言おうと決心した言葉を、由夢に発する。

「今日からも嫌がらせが続くと思う。だから、私とは、距離を置いて」

しばらくじっと私を見返した後、由夢はぷっと吹き出した。

「何言ってんの」

「由夢……」

「親友なのに離れるわけないじゃん。嫌がらせされたら嫌がらせし返すよ」

由夢はおどけて、グーパンチをしてみせた。

「それにさ」

すたすたと歩きだした由夢が、笑顔で振り向く。

「もう嫌がらせはないと思うよ」

「どうして?」

「だってー……」

由夢はもったいぶるように、少しためてから言う。

「大橋くんが加恋のこと、守ってくれたから」

だから、もう大丈夫だと思うよ、と由夢が笑う。

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