ずっと探していた人は
「それじゃあ、わかった人は手を挙げて答えてね」

徹たちに勉強を教えることになって2日目。

昨日はテスト範囲の数学の公式を確認したけれど、クラスで真ん中より少し上ぐらいの成績を維持している中川くん以外、見事に誰も覚えていなかった。

そして今日の昼休みは、中川くんと私で、徹と大橋くん、そして由夢の英語力を試すことにしていた。

「1問目、行くぞ~」

私だけで3人も教えることは大変過ぎるから手伝ってよ、というお願いをしぶしぶ引き受けてくれた中川くんが、だるそうに始める。

「upset」

…………。
…………。

「誰か、わからない?」

3人の顔を順番に尋ねながら尋ねる。

「はい!」

徹が勢いよく椅子から立ち上がる。

「徹」

「あがる!」

「違う」

即否定すると、徹は少ししょんぼりした様子で椅子に座った。

「由夢と大橋くんは?」

「私、さっぱり」

「俺も……」

「は~、お前らなあ、大丈夫かよ本当に」

“動揺する”だよ、と中川くんがため息をつく。

「じゃあ2問目行くぞ」

「こーいっ!!」

返事だけは元気な徹の声がにぎやかな昼休みの教室に響き渡る。

「previous」

「はい!!」

元気に手を挙げたのは、由夢だった。

「みる!!」

「「みる??」」

私と中川くんが思わず同時に尋ね返した。

「お試し見みたいな?」

「それを言うならpreviewでしょ」

「あ、そっか」

「それじゃあ3問目」

答えを伝えた後に、中川くんがーかなり呆れながらー問題を出す。

結局15問出題したけれど、3人が答えられたのはたったの2問だけでー……
中川くんは一昨日の私と同じように、「はあー……」と大きくため息をついた。
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