ずっと探していた人は
「本当に午後からも当番なんで。俺らのクラス、有難いことにめちゃくちゃ人気で、今しか休憩する時間取れなかったんっすよ」

「そうなんだ……」

徹の言葉に同意するかのように、私も力強くうなずく。

「少しの時間でも2人でまわれたら嬉しかったけど、そんなに大変なら仕方がないね。クラスの出し物優先だから」

涼くんは、さっきと同じように寂しそうに言い残していくと、ササっと仲間の元へ戻っていった。


「徹……」

涼くんが完全に去ったのを確認してから、目の前の徹の背中をつつく。

「なにー?」

徹はまた明るく「腹減ったなー」と笑う。

「ありがとうね、ほんとに」

「なにがー?」

徹はまったく気にしていない様子で、それがフリだとわかりつつも、私は嬉しかった。

「よく状況理解できたね……」

午前中に涼くんと話したとき、徹はいなかったのに。

「お前なー、何年幼馴染やってると思ってんだよ。しかも幼稚園から高校までずっと一緒だぜ?」

いや、何十年か、と徹が言い直す。

「やっぱり持つべきものは幼馴染だろ?」と笑う徹に、私は素直にうなずく。

「徹……」

「なんだ?」

「やっぱり……ゾンビの変装、世界で一番似合ってたよ……」

「嘘つけ!!!」

今更ながらのフォローに、徹はバシッと私の頭を叩く。

「困ったときは、俺には遠慮せずに頼れ。一人で抱え込むなっていつも言ってんだろ」

徹は笑いながらも、真剣な目で私に言う。


「ねえ、タコ焼き、1人1パックは多いかな? ほかの屋台も行くよね?」

注文を次に控えた由夢が、私たちに聞く。

「えーっ、1人1パックじゃ少なくね?」

「いや、少なくはないでしょ!」

「少ないって! 俺最低2パックは食べたい!!」

「はー???」

夏祭りでタコ焼きを買う時にしたやり取りと全く同じやり取りに、由夢が呆れた声で返事するのが聞こえる。

本当にいつもお調子者の徹。

けれど、徹と幼馴染でよかったな、と私は2人のやりとりを聞きながら、徹の存在の大きさを噛み締めた。


< 93 / 155 >

この作品をシェア

pagetop