ずっと探していた人は
「俺、人見知りだから。後夜祭とか、あんまり得意じゃなくて」

逃げてきた、と大橋くんが自信なさげに笑う。

私たちの学校では毎年、文化祭の締めくくりイベントとして、夕方から在校生だけで後夜祭が開かれる。
後夜祭といっても、生徒たちの投票で選ばれた楽曲が数曲流され、曲に合わせて適当に踊るだけのものだが、「後夜祭で一緒に踊った相手とは、ずっと一緒に、幸せになれる」というジンクスーどこの学校にもありそうだけれどーがあり、みんな真に受けてはいないものの、毎年文化祭の中で一番盛り上がるイベントであることも事実だった。

「ねえ、私も屋上で過ごしてもいい?」

「うん、もちろん……」

大橋くんが何か言いたげだったことに気づいたけれど、私は気づかないふりをして大橋くんに近づく。

風になびくスカートを抑えながら大橋くんと一緒にグラウンドを見下ろすと、グラウンドは大勢の生徒で埋め尽くされていた。

「すごい人だね」

「全校生徒だからね、俺たちを除いて」

確かに、と大橋くんの言葉に私はうなずく。

「それでは、さっそく始めますよ~!」

実行委員の声が響き渡るとともに、去年大ヒットした映画の主題歌が流された。

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