ずっと探していた人は
「ありがとう。守ってくれて。お礼、言うの遅くなっちゃってごめん」

大橋くんの目を見て、真っ直ぐ伝えると、大橋くんはまたぶんぶんと横に首を振る。

「滝川さんのためにしたんじゃない。俺がしたかったから、しただけ。だから、何も気にしないで」

「けど、嫌がらせが無くなったのは、大橋くんのおかげだよ、絶対」

もう一度言うと、大橋くんは、「それならよかった」と笑う。

「滝川さんは……」

大橋くんは大きく息を吸い込み、少しだけ息を止める。

それからゆっくりと続けた。


「滝川さんは……幸せだよね?」


真っすぐに私を見つめながら、大橋くんは首を傾げる。

「え……?」

唐突に投げかけられた質問に、私は戸惑う。

「あ、ごめん、なんでもない……」

大橋くんは、少し慌てた様子で、私から目を逸らした。

「……うん、幸せだよ」

大橋くんの質問の意図がわからなかったけれど、私はとりあえず頷く。
――だって、別に、不幸なわけじゃないし。それに、嫌なことや苦しいこともあるけれど、どんな時だって一緒にいてくれる友達がいる。

「そっか」

大橋くんは頷いた私に、優しくー眉毛を八の字にしながらー微笑んだ。

「滝川さんが幸せなら……よかった」

その笑顔は儚くて、少し苦しそうで、私は目を逸らすことが出来なかった。
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