ずっと探していた人は
別れ
「ねえ加恋、今週の土曜日、空いてない?」

文化祭も無事終わり、一段と寒さが増してきた今日この頃。

マフラーをぐるぐる巻きながら帰り支度をしていた私のところに、由夢がいつもより数倍浮かれた様子でやってきた。

「今週の土曜日? 空いてたと思う」

スマホでスケジュール帳を開きながら答える。

「うん、空いてる。どうしたの?」

「実はね、さっき達也から連絡来てね、クリスマス、ディナー予約したってさ~!」

由夢はスマートフォンを両手で抱えながら、その場でぴょんぴょんと飛び跳ねた。

「しかもね、去年行きたいって言ってたところ、覚えててくれたの」

「うわ~~いいね~~、やっぱり達也くん素敵だ~~」

なかなか会えなくて連絡も返ってこなくて、最近はめっきり悩んでいた由夢。

由夢の久しぶりに心からの笑顔に、私も嬉しくなる。

「久しぶりにデートするからね、洋服買いたくて。ついてきてくれない?」

“せっかくだから、とびっきり可愛くなって、もっと達也に好きになってもらいたいんだ”

少し恥ずかしそうに言う由夢は、本当に“恋する乙女”という感じで、とっても可愛かった。

「もちろん! ついていく!!」

「わーい!!!」

由夢が無邪気に喜ぶ。

そんな由夢を微笑ましく思うと同時に、私はもうクリスマスの時期がやってきたのか、と少し驚く。

そして私はまだ涼くんからクリスマスは誘ってもらっていないことを実感し、少しだけ寂しさを感じた。


< 98 / 155 >

この作品をシェア

pagetop