青に染まる
4
「みぎわかなとさん、ビオラっと」
僕は、泣きそうな顔をして去っていったお客様の名前をメモする。
今日のお客様はあの人一人だろうか。
過去のメモを振り返ってみると、やはりちらほらと「みぎわかなと」の名前はあった。結構な頻度で来てくれているから、あの人は常連さんだ。
やはり馴染みの店の店主に顔を覚えてもらえないというのは、悲しいものなのだろうか。
「それにしても、汀さんかぁ……ご縁があるのかな。ちゃんと覚えないとな」
まさか自分と同じ苗字の人に出会うとは思っていなかった。それに常連さんだから、やはりちゃんと覚えないと。
……とは思えど、努力でどうにかなるのならとっくにどうにかなっている。実際前日の夜に記憶するために何度もメモを読むのだが、からっきしだし。こんな性質がなければ苦労しないだろうになぁ。
今日他に来たのは、やはり近所の常連さんだけだった。試しに聞いてみる。
「そういえばこの辺に汀って苗字の家があるの知りませんか?」
「え? 汀さんって言ったら貴方のところ一軒じゃないですか?」
ふむ。哀音さんは常連さんだけど、近所の人じゃないのか。不思議な人だなぁ、と思う。近所でもないのにこんな辺鄙な店に足を運んでくれるなんて。
まあ僕の稼ぎになってくれているのだから、有難いことだが。
僕は、泣きそうな顔をして去っていったお客様の名前をメモする。
今日のお客様はあの人一人だろうか。
過去のメモを振り返ってみると、やはりちらほらと「みぎわかなと」の名前はあった。結構な頻度で来てくれているから、あの人は常連さんだ。
やはり馴染みの店の店主に顔を覚えてもらえないというのは、悲しいものなのだろうか。
「それにしても、汀さんかぁ……ご縁があるのかな。ちゃんと覚えないとな」
まさか自分と同じ苗字の人に出会うとは思っていなかった。それに常連さんだから、やはりちゃんと覚えないと。
……とは思えど、努力でどうにかなるのならとっくにどうにかなっている。実際前日の夜に記憶するために何度もメモを読むのだが、からっきしだし。こんな性質がなければ苦労しないだろうになぁ。
今日他に来たのは、やはり近所の常連さんだけだった。試しに聞いてみる。
「そういえばこの辺に汀って苗字の家があるの知りませんか?」
「え? 汀さんって言ったら貴方のところ一軒じゃないですか?」
ふむ。哀音さんは常連さんだけど、近所の人じゃないのか。不思議な人だなぁ、と思う。近所でもないのにこんな辺鄙な店に足を運んでくれるなんて。
まあ僕の稼ぎになってくれているのだから、有難いことだが。