青に染まる
「あの」
「あ、はい」
遠慮がちにかけられた声にはっと我に返る。いけないいけない。接客中だというのに物思いに耽ってしまった。
記憶のことは考えても仕方ないのだ、と放っておく。
見ると、男の人はリナリアを指差していた。
「これを、花束で、ください」
「かしこまりました」
今日置いたばかりのリナリア。早速買い手がついて、「よかったね」と心中で呟いた。
手早く花を包装しながら、なんとなく言葉を投げ掛けてみた。
「贈り物用ですか?」
リナリアの花言葉は確か、「私の恋を知ってください」──告白にうってつけの花だ。
おっと、下世話なことを考えてしまった。
「まあ、そうなりますかね」
困ったような仕草をしながら、そう答えた彼に思わずニヤリとしてしまう。
彼の容姿なら、引く手あまたにちがいない。この花をもらう人は幸せ者だろう。
なんとなく心が弾んで、包装をてきぱきと進める。
「まあ、相手が俺をどう思っているかは、わからないんですけどね」
自信なさげな彼を元気づけようと僕は言葉を連ねる。
「自信持ってくださいよ! 貴方は格好いいんですから、絶対大丈夫ですって!」
そう言って花束を差し出す。だが、それが受け取られることはなかった。男の人が声を低くして呟いた。泣きそうな声で。
「それを、君が言うのか……!?」
「あ、はい」
遠慮がちにかけられた声にはっと我に返る。いけないいけない。接客中だというのに物思いに耽ってしまった。
記憶のことは考えても仕方ないのだ、と放っておく。
見ると、男の人はリナリアを指差していた。
「これを、花束で、ください」
「かしこまりました」
今日置いたばかりのリナリア。早速買い手がついて、「よかったね」と心中で呟いた。
手早く花を包装しながら、なんとなく言葉を投げ掛けてみた。
「贈り物用ですか?」
リナリアの花言葉は確か、「私の恋を知ってください」──告白にうってつけの花だ。
おっと、下世話なことを考えてしまった。
「まあ、そうなりますかね」
困ったような仕草をしながら、そう答えた彼に思わずニヤリとしてしまう。
彼の容姿なら、引く手あまたにちがいない。この花をもらう人は幸せ者だろう。
なんとなく心が弾んで、包装をてきぱきと進める。
「まあ、相手が俺をどう思っているかは、わからないんですけどね」
自信なさげな彼を元気づけようと僕は言葉を連ねる。
「自信持ってくださいよ! 貴方は格好いいんですから、絶対大丈夫ですって!」
そう言って花束を差し出す。だが、それが受け取られることはなかった。男の人が声を低くして呟いた。泣きそうな声で。
「それを、君が言うのか……!?」