青に染まる
 大きなクラス替えがあったため、自己紹介の時間が設けられた。自然と教室のみんなの目は、白崎くんの方に集まる。

 出席番号順に始まった自己紹介はやがて白崎くんの番になった。誰もが彼に注目。僕も彼がどんな言葉を発し、どんな人となりを見せてくれるのか気になった。

 す、とほとんど雑音を立てずに起立した白崎くんが口を開く。

「白いに山に奇妙の奇と書いて白崎、幸せに葵で幸葵です」

 そして、同じようにほとんど雑音を立てず着席した。辺りががやがやと騒がしくなる。

 それはそうだろう。期待した自己紹介が十秒も経たないうちに終わったのだ。しかも内容は名前だけ。そりゃびっくりだ。

 けれど本人は何食わぬ顔。なかなか進まない自己紹介に少々苛立っているように見えた。
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