青に染まる
 どうにか自己紹介はホームルームのうちに終わった。白崎くんは相変わらず何食わぬ顔だ。休み時間になって、周囲から質問責めに遭っている。

 あんな自己紹介だったのだ。気になる周りの気持ちもわかる。だが、群がることもないんじゃないか。まあ今まで違うクラスで、都市伝説並の人物だったのだ。珍しがるのは仕方ないだろう。

 僕はその様子を見て、思わず苦笑する。気になるんだけど、あの人の群れの中心で彼が渋い顔をしているのがなんとなく目に浮かんだ。

 交流はしたいけれど困らせるのはなあと思っていた僕が、白崎くんと話す機会は案外と早く訪れた。中間試験を挟んですぐ後、席替えで前後になったのだ。

「後ろの席の相楽(さがら)だよ。よろしくね」
「何故俺が君とよろしくしなきゃならないんですか」
「席前後だから?」
「そんなのただの偶然でしょう」
「偶然の中でも運命かもよ?」

 ちょっとふざけて言ってみると、あからさまに呆れられた。深々と溜め息まで吐かれた。

「俺は運命なんて不確かなものは信じません。それにどちらかというと世話になるのは隣でしょう」
「隣の人とはもう挨拶済ませたもの」
「……」

 あれ、もしかして僕論破しちゃった?白崎くんが黙り込んだ。

 しばらくすると白崎くんが、やはり溜め息を吐く。どうでもよさそうにぼそりと「よろしく」と呟いたのを、僕は聞き逃さなかった。
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