青に染まる
3
放課後。僕は使っている机に、教科書と書きかけのノートを広げた。
「相楽は残って勉強ですか?」
「家に帰るとやる気なくすからね。今のうち」
「へぇ」
すると背もたれを前にして、幸葵くんが座り直す。僕のノートを覗き込まれて、ちょっと恥ずかしい。
お世辞にも頭がいいとは言えない僕のノートを見られるのは、気恥ずかしかった。
「字、綺麗ですね」
予想外に褒められた!?
「そ、そんなことないよ!」
「いえ、字の綺麗な人は」
一瞬、憐れみを帯びた目で見られる。
「頭がよくないというらしいので」
「そ・れ・は!」
僕も似たようなのを聞いたことがある。叫んだ僕の顔はきっと夕焼けに負けなかっただろう。
「天才は字が汚いの間違いだよ!?」
「えっ、そうでしたっけ?」
「そうだよ、それに何気傷つくよ!」
頭悪いとど直球で言われるとは思ってもみなかった。そりゃ、相手は生徒職員全員が口を揃えて神童と呼ぶ人だけれども! 比較対象を間違えている気がするよ。
「天才は字が汚い。確か脳の処理速度に手が追いつかないからって理由じゃないっけ」
「ふむふむ」
まさか僕が幸葵くんに教えることがあろうとは。少し絶句した。こういう雑学には詳しいと思っていたのだが。
すると彼はむっと眉根を寄せる。
「つまり俺は凡人と」
「いやいやいやいや、言葉の綾だから」
ちなみに見せてもらった彼の字はすこぶる綺麗だった。字は読めるに越したことはない。憎たらしいほど綺麗な文字とにらめっこ。
「いつまで見てるんですか、相楽」
「メモまで丁寧で見易いとか……さすがというか……」
例を一つ挙げれば、今日の数学の授業範囲についてだ。要所要所に下線が引かれ、場所によっては「他は全てこの公式の応用」と書かれている。
正直見易い。その証拠に幸葵くんの教科書を見ながらだと、解く速さがいつもより速い気がする。するすると答えが導き出せるのだ。
「魔法みたいな教科書だね」
「それ俺のですってば」
「もうちょっと貸してよ」
「……仕方ないですねぇ」
呆れたように言いながらも貸してくれる辺りいい人だ。けれど、気になることがある。
「相楽は残って勉強ですか?」
「家に帰るとやる気なくすからね。今のうち」
「へぇ」
すると背もたれを前にして、幸葵くんが座り直す。僕のノートを覗き込まれて、ちょっと恥ずかしい。
お世辞にも頭がいいとは言えない僕のノートを見られるのは、気恥ずかしかった。
「字、綺麗ですね」
予想外に褒められた!?
「そ、そんなことないよ!」
「いえ、字の綺麗な人は」
一瞬、憐れみを帯びた目で見られる。
「頭がよくないというらしいので」
「そ・れ・は!」
僕も似たようなのを聞いたことがある。叫んだ僕の顔はきっと夕焼けに負けなかっただろう。
「天才は字が汚いの間違いだよ!?」
「えっ、そうでしたっけ?」
「そうだよ、それに何気傷つくよ!」
頭悪いとど直球で言われるとは思ってもみなかった。そりゃ、相手は生徒職員全員が口を揃えて神童と呼ぶ人だけれども! 比較対象を間違えている気がするよ。
「天才は字が汚い。確か脳の処理速度に手が追いつかないからって理由じゃないっけ」
「ふむふむ」
まさか僕が幸葵くんに教えることがあろうとは。少し絶句した。こういう雑学には詳しいと思っていたのだが。
すると彼はむっと眉根を寄せる。
「つまり俺は凡人と」
「いやいやいやいや、言葉の綾だから」
ちなみに見せてもらった彼の字はすこぶる綺麗だった。字は読めるに越したことはない。憎たらしいほど綺麗な文字とにらめっこ。
「いつまで見てるんですか、相楽」
「メモまで丁寧で見易いとか……さすがというか……」
例を一つ挙げれば、今日の数学の授業範囲についてだ。要所要所に下線が引かれ、場所によっては「他は全てこの公式の応用」と書かれている。
正直見易い。その証拠に幸葵くんの教科書を見ながらだと、解く速さがいつもより速い気がする。するすると答えが導き出せるのだ。
「魔法みたいな教科書だね」
「それ俺のですってば」
「もうちょっと貸してよ」
「……仕方ないですねぇ」
呆れたように言いながらも貸してくれる辺りいい人だ。けれど、気になることがある。