青に染まる
「早く食べたい」
「すぐできるから。兄貴は日課、やってきたら?」

 おおっと忘れるところだった。

 哀音の言う僕の日課とは、花の世話だ。それらの花は、庭の片隅で育てている。季節ごとに違う花を見られるようにしているのだ。

 庭に出ると、月明かりが草花を照らしていた。

「シロタエギクは季節を問わず面白いよねぇ」

 水をやりながら、きらきらとした細い枝のような葉に目をやる。花がなくてもどこか華やかなのがシロタエギクだ。

 時期は徐々に夏に向かう頃。思い切って向日葵を植えたが、ちゃんと咲くだろうか。

「楽しみだなぁ」

 そういえば、学校の花壇はどんな花を咲かせるのだろうか。

 物思いに耽るうちに、彼が呼びに来た。

「おーい、兄貴ー……って、また花のこと妄想してんの?」
「妄想とは失礼な。想像だよ」
「変わりゃせんだろ。晩飯できたぞ」

 哀音はとうとう僕にまで反抗期か。違うか。

 とりあえず、いい匂いのする方向へ向かっていく。食事は既に並んでおり、彼はエプロンを丁寧に畳んでいた。

 兄弟二人きりというのが物寂しいが、哀音の料理は美味しそうだ。
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