青に染まる
 僕が向かったのはやはり毎日の習慣からか、学校の花壇のところだった。

 マリーゴールドが咲いている。あまりいい花言葉のないこの花だが、黄色や橙色といった明るい色に元気づけられる。

 いつものようにさっと水をあげて、少し生えた雑草取りをした。

「あ、やっぱりまた来てた」

 そこに、春子さんがやってくる。

「よっ」
「初対面相手に『よっ』はないだろ夏帆(なつほ)

 今日は見慣れない人物も一緒だ。

 「よっ」と親しげに手を挙げた人物は手足の長いスポーティーな体格の春子さんと違い、日本人一般女子高生といった雰囲気がする。カーディガンの袖が伸びたのをいわゆる萌え袖のようにしているが、残念ながら全く萌えない。

 夏帆と呼ばれたその人はてへっみたいな態度を取って笑う。チャラいな、というのが全体的な印象だ。

「春子さん、その人は」
「ああ、相楽、こいつは」
「えー、何々。二人は名前呼びの関係!? 春子は惚れた腫れたの話に興味ないとは思っていたけど、ちゃんとマークしてるんだねぇ。うんうん、春子もいつかはアタシの元を離れて巣立っていくんだ。お母さん嬉し、いてっ」
「馬鹿は程々にしな、阿呆」

 びしりと効果音のついた手刀で突っ込まれた夏帆さん。どうやら野次馬根性全開のようだ。

「ちょ、春子ひどいっ!今『夏帆』のイントネーションで『阿呆』って言ったよね!? ね!?」
「こいつ(みなみ)夏帆。サボり魔の一人ね」
「無視!?」

 そんなコントのようなやりとりに、思わず和んでしまう。

「南さんですか。(みぎわ)相楽です」
「夏帆でいいよ! あとタメね! ところで右が相楽なら左は何なの?」
「みぎわって苗字じゃど阿呆」

 お馬鹿全開の夏帆さんに突っ込む春子さん。なんだかお疲れさまです。
< 47 / 85 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop