青に染まる
「ねぇ、幸葵くん。どうしたの?」
「……いえ」

 俯き加減に彼は言った。

「ただ、なんとなく今日は、一緒に帰りたいと思っただけです」
「そっか」

 じゃあ一緒に帰ろうと、特に何も深く考えずに僕は幸葵くんと手を繋いで帰った。

 彼が着ている制服からは、石けんのような清潔感のある匂いがした。もしかして哀音が言っていたのはこれかな、なんて軽く考えた。深く考えることをしなかったのだ。







 僕はあの関係を友達だと思っていた。──あの日までは。

 けれど、もう少し考えていたらわかったはずだ。省みてみれば、思い当たる節なんてたくさんあった。それを見過ごしてきたために、僕は──
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