青に染まる
「まずはごみ拾いだよー」

 和やかな雰囲気で花壇の整備を始める。当然のように捨ててあるガムやちり紙を拾って、三角袋に入れていく。西園くんが怪訝そうな顔をした。

「結構あるものですね……ひどい」

 僕はもう手慣れたものだが、彼は拾うたびに痛ましげな表情になる。タイムロスはいただけないが、気持ちはわかる。

「こういう人がなかなか絶えないから、ちゃんと毎日整備しなくちゃいけないんだよ」
「なるほど……相楽先輩はいつも一人でやってらしたんですか?」
「うん、最近は春子さんとかが手伝ってくれるようになったけど、やっぱり大変だよ。あと、そこの植木の下とか見てごらん」

 西園くんが植木を首を傾げて覗き込む。数秒後、うわという悲鳴が上がる。手でわさわさとかき集めたそれはペンやら消しゴムやらの文具の他、煙草の吸殻なども混じっていた。

「なんでこんなところにこんなにものが……」
「わからないよ。でもたまに見てあげないと結構ひどいことになってるから。吸殻に関しては、教師のマナーだね」

 生徒のマナーも悪いのだが、それは指導する大人である教師のマナーの悪さに起因するのではないかと僕は考えている。けれど緑化委員でない僕が何か訴えたところで、どうにもならない。僕には何の地位もなかったし、地位権力に興味もなかった。けれど、必要なことはある。

「春子さんが緑化委員の意識改革をするって言ったときに思いついたんだけど、緑化委員のみんなにこの現状を知ってもらうことで学校に改善の訴えができるんじゃないかなぁって思うんだ」
「なるほど! それは名案ですね」

 ふむふむ、と西園くんは結構聞き入ってくれる。賛同もしてくれた。これはいい方向に行きそうだ。
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