青に染まる
 教室に着くと、やはり幸葵くんの方が早く登校していた。今日はラブレターびりびりはやっていないようだ。少しほっとする。が……

「おはようございます、相楽」

 何故だかわざとらしく見える彼の笑顔が怖い。

「お、おはよう。今日も早いね」
「ええ。相楽、お手紙ですか?」
「え、ああこれ?」

 そういえば例の便箋を持ったままだった。デザインが可愛いから、ラブレターとでも勘違いしたのだろうか。

「春ですねぇ」
「今は夏だよ」
「洒落ですって」

 他愛のない言葉を交わしていく。あらぬ誤解を受けないように僕は補足する。

「残念ながら、春じゃないんだなぁ。男の子からだよ」
「……へぇ」

 あれ?どうして幸葵くんの目が据わっているのかな。と思ったが、その表情は束の間に消える。

「同級生ですか?」
「ううん。一年の子みたいだよ。緑化委員って書いてあるから春子さんから何か聞いたんじゃない?」
「ほう?」
「言葉遣いも綺麗だし、悪い子じゃないと思うよ」
「ふぅん」

 相槌に全く感情がこもっていない幸葵くん。どうしたのだろうか。
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