青に染まる
 相楽が、知らない誰かと笑って話している。教室の窓から花壇を見下ろし、俺はその光景を眺めていた。胸は痛むなんてもんじゃない。許されるなら、暴れ回って教室中の机や椅子をぐちゃぐちゃにしたいくらいの感情が湧き上がる。

 こんなことをすることとなったきっかけは、今朝のことだ。彼が手に四葉のクローバーをあしらわれた可愛らしい便箋を手にしていた。自分もそういうのを受け取ることがざらにあるから、相楽の元にもとうとう来るようになったのかとざらついた心で認識していた。

 相楽は魅力的だ。いつも花のいい匂いを纏っているし、綺麗なウグイス色の目も持っているし笑顔は太陽のように眩しい。花のことを語る姿も思う姿も愛しかった。

 そんな相楽の溢れんばかりの魅力に、勘づかない方がおかしい。まあ天は二物を与えないという格言が表す通り、相楽は特段目立つような人物にはなり得なかった。が、それでもいつか誰かが気づくだろうと俺は警戒していた。その懸念がとうとうと思い、春が来たんですねとかまをかけてみたがどうも違うらしい。

「男の子からだよ。緑化委員なんだってさ」

 男。やけに胸がざわついた。女子と関わるときより、警鐘ががんがんと頭に鳴り響く。朝はそれとなく流したが、俺は相楽が(きじ)撃ちに立った昼休み。机に仕舞われた便箋を見た。

 西園(にしぞの)秋弥(しゅうや)。自動的にそれは「敵」の名前と認知した。言い過ぎかもしれないが、それでも俺は警戒せずにはいられなかった。

 そうして、今に至るわけである。

 ……随分と二人は仲睦まじく見える。今日が初対面とは思えないくらいだ。

「西園秋弥……」

 相楽が放置していった便箋を俺は無意識に握りしめ、西園秋弥へ冷たい視線を送った。
< 70 / 85 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop