LOVEHATE~御曹司社長と黒い子作り婚~
「千花、大丈夫か?」
その言葉を無視し、私は体を起こして、再び柵に近付こうとするけど。
後ろから抱き締めるように、体を押さえられる。
「離してよ!!」
そう、その拘束を振りほどこうと抵抗するけど、それはビクともしない。
自分の体を押さえている綾知さんの手を剥がそうと、思いっきりその手に爪を立てるけど、それは離れない。
私の爪先が真っ赤に染まり、綾知さんの手も血で赤く染まる。
「千花、落ち着いて」
少し冷静になったからか、その言葉が耳に届いた。
私の視界は、綾知さんの手から流れる血をただ映していた。
「死にたい…」
もう、死んでしまいたい。
妊娠してもしなくても、この先私は辛い事しかない。
「死なせない」
そう言って、私を抱き締めている力がさらに強くなった気がする。
「ギリギリでしたね?
死なれたら、洒落になんないですもんね」
背後から、倉持さんだと思われる声がして。
少し、笑っているのが分かる。
「倉持、今日はもう帰れ」
「え。
まあ、また死のうとされたら厄介ですもんね。
じゃあ、いつにします?
あまり日が開いたら意味ないですよね?」
倉持さんのその言葉に、また体が震えて来る。
「倉持、もうこんな事は辞める。
だから、もういい」
綾知さんのその言葉に、え、と振り返りそうになるけど、
強く抱き締められていて動けない。
「マジですか?
まあ、また俺が必要になったら、呼んで下さい。
千花ちゃんなら、いつでも歓迎だから」
「早く、帰れ」
その綾知さんの声が、怒っていて。
私だけじゃなく、倉持さんもそれを感じ取ったのか。
失礼します、とすぐに倉持さんはこのマンションの部屋から出て行った。