LOVEHATE~御曹司社長と黒い子作り婚~
本当は
暫く、そうやって抱き締められていたけど。
綾知さんの手の怪我が気になった。
「…手、ごめんなさい。
私思いっきり、引っ掻いたみたい」
引っ掻いたのか、引き裂いたのか、爪で抉ったのか、混乱していたから分からない。
綾知さんの両方の手の甲から、今も新たに血が出ている。
「指輪選んだ後で良かった」
そう、クスクスと笑っている。
暫くは、手に傷が目立つだろうし、
もしかしたら、消えない傷も付けたかもしれない。
「綾知さん、もう死のうとかしないけど。
もう少しの間、このままで居て欲しい」
「分かった」
そう言って、私をさらに包み込むように抱き締めて来る。
今まで、綾知さんにこうやって背後から抱き締められると、
怖くて体が震えたのに。
何故か今は、とても安心した。
「千花、もうこんな酷い事しないから。
だから、もう死のうなんてしないで欲しい」
「うん…」
もうこんな目に合わないのなら、
死ぬ理由なんてない。
正直、今、またもう一度このベランダから飛べと言われても、
怖くて出来ない。